アジアスタートアップレポート

成長が加速するアジアスタートアップと日本企業の連携メリットとは

AEA運営委員会

産官学の社会実証が進む千葉県柏の葉エリアを拠点にアジアのテクノロジー系スタートアップのイベントを開催するAEA(アジア・アントレプレナーシップ・アワード)運営委員会は、AEA2021の共催パートナーでありアジア各国の状況に詳しい日本貿易振興機構(ジェトロ)の海外調査部 アジア大洋州課 課長代理 新田 浩之氏にインタビューを実施するとともに、各調査データを元にアジアスタートアップと日本企業が協業・連携するメリットをまとめます。

 また、人口の増加に伴い世界的な経済成長の中心地として、注目が集まるアジアでは、近年さまざまなスタートアップが誕生しています。そうした新たな時代の潮流の中で、アジアスタートアップと日本企業との協業事例も増加しています。今回、AEAではインタビューや各調査をもとに、アジアスタートアップと日本企業が連携するポイントや成功のためのヒントを介します。

<項目>

1.経済成長の中心地であるアジアスタートアップエコシステムとは

2.日本企業がアジアスタートアップと連携する意味

 ①成長市場への参入

 ②次なるユニコーン企業への期待

 ③複雑化する経済・社会問題にビジネス機会

3.アジアスタートアップとの連携による課題と解決方法

経済成長の中心地であるアジアスタートアップエコシステムとは

若い人材を豊富に獲得にできるアジアではユニコーンが続々登場

経済成長の中心地として注目を集めるアジア地域では人口爆発によってGDPは2030年には世界の成長の約60%を占めると予想されています。あわせて21年4~6月期のスタートアップによる資金調達額は過去最高に達し、世界で136社のユニコーンが新たに誕生しています。新規ユニコーンの大半は米国(76社)ではあるものの、アジア(33社)が続いています※1

特にインドでは、2021年上半期で15社のユニコーンが誕生※2。それも実は2015年ごろからインド・シンガポール・インドネシアなど、アジアスタートアップへの投資が急速に増加、中でもインドは2015年以降、年間1,000件を超える投資(2020年除く)※3が実行されており、各国、シードラウンドへの投資を中心に増加してきたことが影響し、現在のユニコーンの誕生につながっていると考えられます。

※1 CBINSIGHTS(データ

※2 Yourstory Research(データ

※3 アジア新興国における競争力強化に資するスタートアップ投資に関する調査 2021年4月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 対日投資部 対日投資課 DX推進チーム(資料

日本企業がアジアスタートアップと連携する意味

日本企業のアジアへの投資意欲は拡大

ジェトロ新田氏によると、日本企業もアジアへ注目度を高めているという。ジェトロの「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」の結果を見ると、大企業および中小企業にてアジアの現地スタートアップへの連携への関心は増加傾向にあることがわかります。

※(出所)「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(ジェトロ)

日本企業がアジアに注目すべき理由

なぜ日本企業はアジアスタートアップへ投資・協業するのでしょうか。今回はジェトロ新田氏のインタビューを通じ、その理由を以下3つのポイントにまとめました。

人口が増え続けるアジア太平洋地域は、2025年には世界経済に新たに誕生する24億人の中流階級の圧倒的多数(90%)を占めることになります。日本国内では人口減少が続いていますが、アジアはまだまだ人口が増加し、成長が期待される市場です。ASEAN市場の課題についてよく熟知するアジアスタートアップと連携することで、日本企業のアジア進出・販路開拓の足がかりになることが期待されます。

※世界経済フォーラム 年次総会2020(記事)

スタートアップなど動向を調査・分析するアメリカの調査会社CBINSGHTSのデータでは、2021年9月時点で世界のユニコーン企業837社、その内日本は6社、中国・香港は171社、韓国は11社、インド40社、ASEANでは19社となっています※1。Startup Genomeのスタートアップエコシステム関連調査データでも、アジアのエコシステムは成熟しつつあり、次なるユニコーン企業の誕生への期待も高まっています※2。成長が期待できるスタートアップ、そしてユニコーン企業の存在によって、彼らとの連携がもたらすアジアにおける事業規模の拡大や、投資収益の獲得などが期待されます。

※1 CBINSIGHTS

※2  Startup Genome(データ

ASEANはじめアジア各国は、成長が期待される一方、「教育」、「生産性」、「金融」、「医療」などの分野で、未だに多くの社会課題を抱えています。2020年からのコロナ禍において、人との接触が回避され、サプライチェーンや労働集約型産業での新たな課題が表面化し、さらに複雑な社会情勢を生み出しました。一方で、このように多様で複雑化した社会課題に対して、スタートアップ企業によるソリューション(解決策)の創出が期待されています。特にデジタル化といった新たな分野においてはアジア各国の政府もスタートアップと共にその解決に注力し始めています。

コロナ対応などアジア各国で顕在化している社会課題の中には日本と共通する課題もあります。アジアのみならず、新たに開発された技術を導入することは、日本の社会課題解決につながるのではないでしょうか。

アジアスタートアップとの連携による課題解決方法

アジアスタートアップ発掘は専門家やネットワークが鍵

アジアスタートアップのデータベースは欧米諸国に比べて、統一的なデータベースが整備されておらず、有望なアジアスタートアップを探索することは容易ではありません。自社のネットワークやアジアスタートアップ関連イベントで、スタートアップを発掘する方も多いですが、世に知られていないシード・アーリー期のスタートアップの発掘や情報収集は非常に困難であるといえます。

アジアでは欧米のスタートアップ以上に、現地にネットワークを有するVCや現地のアクセラレーター、各領域の専門家等を介してスタートアップの情報を入手することが重要です。さらに、各社の技術内容の詳細や資金調達状況などを把握することで、連携相手にふさわしいスタートアップの発掘につながります。

専門家推薦によるアジアスタートアップが集まる「AEA2021」

産官学連携による社会実証が進む千葉県柏の葉エリアを拠点にアジアのテクノロジー系スタートアップのイベントを開催するAEAは2012年から開催し、今年で第10回開催となります。AEAの大きな特徴は、ジェトロや東京大学の他、アジア各地のインキュベーター、アクセラレーター、大学といったスタートアップ支援に携わる組織に所属する専門家が見極めた、確かな技術力を持つスタートアップが集まることです。資金調達を目的としておらず、日本企業との連携に関心を持っていることを参加条件にすることで、見極めの難しいアーリー期のスタートアップを厳選して集めています。2012年の初開催からこれまで、アジア14の国・地域から217社の技術系スタートアップがAEAに参加しました。過去出場企業は、その結果、IPOやM&AなどのEXITを達成し、事業を大きく成長させています。

これからの世界の経済成長を取り込むという視点でも、アジアスタートアップとの連携は重要なポイントです。ぜひAEAをきっかけに連携パートナー候補となるアジアスタートアップを発掘してください。